TOPIX

2007年4月1日

弁護士の仕事

弁護士 福井 啓介

  • 弁護士がどの様にして仕事に取り組み、生活しているかについてお話し致します。

    現在、全国の弁護士数は、大まかに言って約22,000名程であり、その半数の約11,000名が東京で活躍しています。そして約3,000名が大阪弁護士会に、愛知弁護士会に約1,000名が登録しております。

    結局、その余の弁護士がその他の各地にいるということになります。

    ちなみに京都弁護士会には395名の弁護士が登録しています。弁護士の数は地方に行けば行くほど少なくなります。

    例えば、四国4県の弁護士の総合計は約300名にしかすぎず、京都の弁護士より少ないほどです。また、鳥取県、島根県等はそれぞれ全県で約30数名ほどにしか過ぎません。(平成18年4月1日当時)

    結局弁護士も都会に集中しているわけです。

    なぜ都会に集中するかというと、社会活動が活発であり、取扱事件も多く、1件当たりの係争金額も高額であるためかと思われます。

    但し、東京等の弁護士がすべて裕福かと言うと違います。むしろ、貧富の差が激しいのです。

  • 弁護士は司法試験に合格しなければ原則としてなれません。例外は大学で法律を教えていた学者に対し、資格を与える場合があるのです。いずれにしろ司法試験合格後は2年間(現在は1年半、将来は1年)に渡り司法修習生を経て弁護士資格を得ることになります。

    司法修習生は国家から月給をもらうことができるのでそれは誠に有り難い制度であります。しかし、将来の法曹としての責任を伴うことは言うまでもありません。

  • 資格を得たとしても、すぐに独立開業することは不可能です。これはすぐに生活できる程の依頼者を獲得するのが困難であると共に、法的知識は別としても依頼者との対応が十分出来ず、信頼に応えることが困難という事実上の理由によるものです。

    そのため、たいていは弁護士として永年の経験がある弁護士の事務所に弟子入りして研鑽を積むということになります。

    むろん、事務所からは給与をもらい、自分の事件を開拓して実績を積んでいくこととなります。この期間の弁護士を「いそ弁」と言います。

    但し、現在のこの様な「親弁」の事務所に入って修行するという形態は少なくなってきており、むしろ何名かの弁護士が集まって運営している法律事務所に入り、その中で事務所のパートナーになり経営団に入ると言うことも多くあります。

    独立志向の強い弁護士は、4、5年すれば「親弁」から離れて独立開業することとなります。その後は正に実力の世界であり、依頼者からの信頼を得られるか否かで差が出ます。

    依頼者の信頼を得る最大の方法は受任事件に勝つことです。

    仮に勝たなくとも負けそうであると判断できる能力を備えることです。 経験を積むと裁判官の顔色や話し方で何を考えているのかおぼろげながら分かるようになるものです。

    負けそうな事件は和解に持ち込んで解決することが求められます。訴訟に負けると信頼関係はなくなるし、次の依頼者を紹介してくれるということもありません。そのため、訴訟に勝つことが事務所の発展にもつながるのです。

  • 私の事務所は2名の若い先生の協力を得て運営しています。取扱事件は不動産に関する事件(明渡、賃料増額、境界等)、相続、離婚等の人事事件、会社整理、倒産、一般消費者に関する事件、サラ金破産、交通事故等の損害賠償請求事件、商標等の知財事件、それから刑事事件など種々雑多な事件を取り扱っています。

    裁判は普通、10時から始まります。また午後は1時から行われます。法廷に出ることはそれほど大変なことではないのですが、その準備が大変です。準備書面を毎回出す必要がありますので、依頼者の方や事件関係者の方にお会いし、当方の主張をまとめて書面にする必要があります。証拠も何を出したら立証できるかの組立と選択が必要です。

    証人調べについては、打ち合わせと共に、何を質問するかの尋問の順番を検討することが必要です。特に、反対尋問については証人の証言を予想し、反論の尋問を組み立てなければなりません。

    そのため、質の高い弁護活動を行うためにはいくら時間があっても足りないぐらいです。

    やむなく休日も事務所に出てくるというのが常態となっています。

  • また弁護士は裁判等の紛争の代理人としての活動だけではなく、弁護士会の公的な活動にも参加する必要があります。そして、時には弁護士会長として会務の責任者となり会を統括することとなります。

    私も平成13年度の京都弁護士会長に就任致しましたが、その時はほとんど事務所の仕事ができず、会務に没頭した年でした。

    また、行政委員としての仕事もあります。

    私は、現在京都市の固定資産評価審査委員会委員として市民の皆様からの不動産評価に関する異議申立の審理を担当しております。

    また、京都府の人事委員会委員として府職員の適正な給与に関する勧告を行うと共に、分限、懲戒処分の相当性についても審査しております。

  • 今後、大量の弁護士が生まれる予定であり、社会的必要性も増してくると思いますが、一方では不適切な弁護士が多く発生しないか心配もしているところです。 いずれにしろ、弁護士も競争時代に入ったことは事実であり、より高度な弁護活動ができる様、研鑽を積みたいと考えております。

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